環境

TCFD提言への対応について

当社は、地域密着型の食品スーパーマーケットとして、目指す世界を、「今も100年後もみんなが健康に毎日を楽しめる世界」としています。その上で、今までの延長では次世代の負担が増え、食糧難・災害が増え、希望が持てない世界になってしまうことを共有認識し、一人ひとりが意識・行動を変え、"デジタル技術"を活用しながら"ウェルビーイング"と"サステナブル"を実現することを目指しています。

スーパーマーケットの経営をとおした地域社会環境との共生は当社の務めであると考えています。気候変動の問題は、地域環境保全、ライフラインとしての店舗運営など、事業に密接に関係していることを認識し、2021年度に環境に関する指標と目標を設定しました。なかでも、CO₂削減やプラスチック削減、食品ロス削減を重要課題として積極的に取り組んでいます。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言のフレームワークへの対応

G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定化理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」より提言された枠組みに基づき、 気候変動シナリオ分析を実施しました。気候変動がもたらす当社事業におけるリスク・機会を明確化し、 事業リスクの軽減、CO₂排出量の削減に向け取組み、今後さらに検討を重ねてまいります。

1.ガバナンス

気候変動問題は、当社を取り巻く環境の長期的変化の一つと捉えており、全社横断で取り組むべき事項と認識しています。

環境問題の重要事項について、社長を議長とし、年1回以上開催する環境委員会で方針を議論、決定、進捗モニタリングを実施します。

また、環境問題を統括するCheif Sustainability Officerが取締役会で活動状況を定期報告する等、気候変動が環境や社会に与える影響を踏まえ、取締役会による監督が図られる体制となっています。

環境マネジメント体制図
環境マネジメント体制に関する会議体と役割
取締役会
業務執行において論議・承認された環境課題に関する取り組み施策の進捗を監督。
リスクマネジメント委員会
環境課題を含む全社の包括的なリスクを抽出・評価、対策を検討。重要事項は代表取締役社長へ報告。年2回以上開催。
環境委員会
環境課題への対応方針を決議、共有。環境課題に関する目標の策定、各部の進捗状況のモニタリングなどを実施。重要事項は取締役会へ報告。年1回以上開催。
Cheif Sustainability Officer
(チーフ環境オフィサー)
環境課題に関する事項の全社的な具体的取組み実行について統括・推進。環境関連情報を収集し、環境委員会を開催、年1回以上取締役会へ報告。
環境委員会分科会
Cheif Sustainability Officerの下、環境課題の目標達成のため、部門横断で組織された4つの分科会で構成。CO₂削減、プラスチック削減、食品ロス削減、見える化について、対策検討、実行。

2.戦略

当社は、気候変動におけるリスクと機会について整理し事業への財務的影響を把握しています。財務的影響の分析にあたって、政策・法規制が脱炭素社会へ移行するリスクではInternational Energy Agency (IEA)が公表する World Energy Outlook から Stated Polices Scenario(以下 STEPS と称する)、Sustainable Development Scenario(以下 SDS と称する)、Net Zero Emissions by Scenario(以下 NZE シナリオと称する)を使用しました。気候変動によって起こる気温の上昇から想定される物理リスクは Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC)が公表する第5次報告書から RCP8.5 scenario(以下 RCP8.5 と称する)、RCP2.6 scenario(以下 RCP2.6 と称する)を使用しました。

財務的影響を試算するにあたっては NZE シナリオ、SDS、RCP2.6 を 1.5℃(2℃未満)シナリオ、STEPS、RCP8.5 を 4℃シナリオとまとめ分析を行いました。

NZE シナリオでは、炭素価格の導入によるリスクが大きな財務的影響を引き起こすことを確認しました。しかし、2013 年度を基準とし原単位(店舗延床面積×営業日数)あたり 60% Scope2 を削減することでリスクが及ぼす影響が軽減できることを確認しました。また、石油価格の変化に伴うプラスチック価格の変化によるリスクも財務的影響を引き起こすことを確認できました。リスクに対応するために 2019 年度を基準とし、プラスチック使用量を25%削減することを目標とし取り組んでおります。他にも石油価格の変化に伴う化石燃料価格によるリスクが及ぼす財務的影響を確認しております。

SDS では電力価格の変化によるリスクが財務的影響を引き起こすことを確認しました。要因としては店舗数の増加に伴い操業コストである電力使用量が増加するためであり、リスクに対応するため再生可能エネルギー由来の電力を 2013 年度基準とし 2030 年時点で50%導入することで影響を軽減しております。

RCP8.5 では、異常気象の激甚化により当社の国内施設に対するリスクが財務的影響を引き起こす可能性があることを確認しております。これは、各拠点が保有する土地建物を除いた有形固定資産や在庫資産に洪水や高潮によって起こる被害や洪水による浸水によって拠点の操業が停止するリスクを確認しております。気温の上昇に伴う水道価格の上昇による影響が及ぼすリスクを確認しております。財務的影響の試算に至らなかった項目については引き続きモニタリングを実施して参ります。

使用シナリオ
物理的シナリオ( 4℃シナリオ) IPCC RCP8.5シナリオ、RCP2.6シナリオ
移行シナリオ( 1.5℃~2℃シナリオ) IEA STEPS、SDS、NZEシナリオ
対象
ヤオコー単体の店舗運営
分析
単体の店舗運営に関する物理的リスクと移行リスクの定性的評価 及び財務的影響
期間
短期(0~3年) 中期(4~11年) 長期(11~30年)

3.リスクマネジメント

当社の気候変動問題を含む全社的なリスクマネジメントは、代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を機関として設置しており、年間2回以上開催しています。

リスクマネジメント委員会は、当社を取り巻くリスクの特定、リスク評価と洗い替え、リスクの顕在化を防ぐための手続きや体制の整備、リスクが顕在化した場合の対応方法や体制の整備に関する事項を、全社的な視点で策定しています。

4.指標と目標

当社では、2021年度、当社が目指す社会の実現のため、環境課題に関する指標と目標を定め、取り組んでまいりました。国の目標「2030年温室効果ガス46%削減、2050年カーボンニュートラル」に向け、更なる取り組みを深化させてまいります。

気候変動による重要なリスクと影響度の定性評価(シナリオ分析)
  リスク項目 リスク影響度 対応策
  分類 大分類 小分類 発現期間 内容 2℃
(1.5℃)
4℃ 財務影響の試算実施項目
リスク 移行リスク 政策と法制・技術リスク 炭素税の導入 中~長期 カーボンプライシング・税負担増大 - Scope1
・冷凍冷蔵設備からのフロン排出抑制
(ノンフロン冷媒への転換、既存設備の漏洩防止強化)
Scope2
・節電の取り組み
(ハニカム清掃、エアコン・冷蔵ケースの設定温度の見直し、空調自動制御システム導入)
・再生可能エネルギー導入拡大
(生グリーン電力・非化石証書電力の購入、太陽光発電・バイオガス発電導入)
CO₂排出量削減規制強化 短~中期 再エネコスト上昇 -
代替フロン規制強化 短~中期 ノンフロン設備投資増 - -
プラスチック削減規制強化 短~中期 プラスチック使用制限・素材変更・リサイクル負担増大 -
市場・評判リスク エネルギー・原料調達コストの変化 短~長期 電気代上昇・原料調達コストの上昇
消費者の行動変化 短~中期 環境を考慮した消費行動による売上の変化 - -
ステークホルダーからの評価変化 短~中期 取引先からの環境対応への評価増(金融機関含む) - -
物理的リスク 急性リスク 異常気象による被害 短~長期 店舗(物流拠点・工場) 浸水・倒壊被害による収益減・コスト上昇 BCP整備による店舗・工場・物流センター等のレジリエンス強化
慢性リスク 降雨や気象パターン変化 中~長期 沿岸地域の浸水リスク上昇による営業停止・閉店による収益減・コスト増
原材料調達コスト上昇
渇水による水道費の高騰
平均気温・海水温・海面上昇 中~長期
機会 製品サービス 消費者の環境対応商品嗜好 中~長期 環境を考慮した消費行動による売上の変化・新分野の売上増加 - - お取引先様との協働や自社工場による商品開発等の推進
エネルギー源 地域コミュニティでの再エネ共有化 中~長期 自社や消費者の余剰電力の供給や需要増加 - -
2030年時点を想定したリスクに関する財務影響
2030年における炭素税導入による影響

前提:130USD/t-CO 2(出典 IEA WEO 2021)

項目 事業インパクト
炭素税コスト 12億円~30億円
2013年度を基準年とし、Scope2を2030年に60%原単位削減
目標を達成した場合の影響額を最小値、未達成の場合を最大値として記載
2030年における再エネ電力調達による影響

前提:10,200MWh再エネ電力を調達

項目 事業インパクト
再エネ電力調達コスト 2.5億円
再エネ電力単価を300[円/MWh]とし試算した影響額を記載
異常気象激甚化による被害

前提:河川氾濫による洪水被害、気圧変化による高潮被害

項目 事業インパクト
固定資産・在庫資産への被害額 3億円~5億円
店舗休業における被害額 3千万円~5千万円
2℃未満シナリオでの影響額を最小値、4℃シナリオの場合を最大値として記載
指標と目標、実績
指標 目標 2021年度実績 2022年度実績
CO₂削減 2013年度比CO₂排出量を総量で60%削減 33.0%減 36.0%減
プラスチック削減 容器包装の使用重量
2019年度比 1店舗当たり25%削減
4.8%減 13.2%減
店頭リサイクル2020年度比
1店舗当たりトレー回収重量10倍
155.6トン 179.3トン
食品リサイクル 食品残渣リサイクル100% 51.0% 48.8%
ヤオコー単体CO₂排出量(GHGプロトコルによる排出算定)(t-CO₂)
カテゴリ 算定対象 2020/3 2021/3 2022/3 2023/3
Scope 1 事業者自らの排出 燃料の燃焼による排出 ※1 4,696 3,900 3,164 3,769
フロン類の漏洩による排出 ※2 16,080 16,074 11,850 15,644
Scope 2 他社から供給された電気・熱・上記の使用に伴う間接排出 ※3 99,833 100,491 111,492 107,314
合計 120,609 120,465 126,506 126,727
  1. ※1 各拠点での都市ガス・LPガスの使用、社有車のガソリン使用等
  2. ※2 各拠点での冷凍冷蔵機器及び空調機器使用に伴うHFCの漏洩。地球温暖化係数を乗じて CO₂排出量に換算。
  3. ※3 各拠点での電力使用(自社商業施設でのテナントの使用分を含む)