せきれい物語
せきれい: え? ぼくだよぉ、やだなあ、カラス君。わかんないかい?
カラス: だって、なんだか印象かわったよ。
せきれい: うふっ。ぼくさ、ちょっと大人になったんだよね。羽の色がこくなったでしょ。
せきれい: ふ~んって、なにさ。もしかして「大人になったらますます手に負えな くなるぞこいつ」とか思ってるんじゃない?
カラス: あっはっはぁ、その物言いはやっぱり君だったね。いやどうも、おみそれしたよ。なんだかこのごろ、見慣れないせきれいがやって来るんで、もしかしたら、君が彼女と待ち合わせしてるのかなって...思って。いやいや、ふっふっふっ。
せきれい: なに?その、ものすご~く嬉しそうな笑い方は。あ、わかったぞ。氷川神社に住まいするカラス君。 確か神社の杜には五羽のカラスがいるね。仲睦まじい二人が二組いてさ、残りの一人が、いっつもがぁがぁと、ご神域の静寂をかき乱している。あれが、君だったんだね。一人さみしく無聊をかこっていた君は、やっぱりいつも一人の僕を見て、わが身を慰めてたんだろう。「あの素敵なせきれい君にも、彼女が居ないくらいなんだから、まして、声のでかいのだけが取り柄の僕なんかには、いなくて当然なんだ」ってね。あぁ、それなのに、このごろ来る見慣れない美しいせきれいが、あの口やかましいやつの彼女なのかもしれないと、羨ましさに気も狂わんばかりになっていたところが、違った!それで思わず笑いがこみあげ...
カラス: ストップ、ストップ。細かい描写では、君は思い違いをしてるけど、まあ大筋では合っているから、僕はなんにも言わないよ。
せきれい: ふん、もっと君の心的苦悩を解明してあげたいんだけどな。
カラス: ところでさぁ、話しは変わるけど、鴨くんたち、この夏は帰らず滞在しているんだね。
せきれい: あ、あのカップルね。なんかね、親類やお友達も、もうシベリアには帰ってないらしくて、自分たちも定住することに決めたったてさ。
カラス: 川越っていいとこだもんね。
せきれい: そうそう、ちょっと足を伸ばせば伊佐沼にいって、白鷺君たちともあそべるしね。
カラス: あれやこれや...
せきれい: あれやこれや...
なんだか、いつになく睦まじく語り合って尽きることのない二人でした。byひらい