プロフィール
三栖右嗣氏(みすゆうじ)記念館は敷地内のシンボルツリーや新河岸川沿いの桜並木など、サクラとはなじみの深い美術館です。スタッフがブログを通じて、さまざまお知らせを提供し、さくらのように愛される美術館づくりをめざしています。
カレンダー
2017年3月
« 2月  
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

スタッフブログ

ヤオコー川越美術館三栖右嗣記念館スタッフによるブログです。

せきれい物語


410c0d588dc5592bfe0f062b7e9aeb221-300x282.jpg

今年の春、新河岸川のほとりに、素敵な水場をみつけた。白い建物を、浅い池がぐるりと取り巻いていて、池の水をなめてみると、美味しい地下水なんだ。僕は毎日水を飲みに通った。
 そのうち、オタマジャクシと知り合いになった。黒くて、ちっちゃくて、すばしこくて、とても食えたものじゃないから放っておいた。
 夏になると彼らは、小さな青ガエルになって、植え込みに消えていった。
 しばらくすると、オタマジャクシのかわりに、なにか同じようにすばしこいものが、水中を飛び回ってるのに気付いた。よぉく目をこらしていないと見失うほど速いんだ。
 まわりで人間たちが
「ねえ、水の中にいるあれ、なぁに」
「あら、ヤゴじゃない?めずらしい、何年ぶりかで見たわ」
 僕は待つことにした。

 その頃、カラスが一羽やってくるようになった。でも彼は、豊かなエサ場を持っているらしく、池の生き物たちには何の関心も示さなかった。パンやらソーセージやらを袋ごと運んできて、水辺で食い散らし、池の水を飲むと帰って行った。

 秋になると、ヤゴたちは、建物正面のガラス窓、アプローチ、横手の出入り口に上陸し、孵化しだした。孵化したてのヤゴは、あ、もうトンボだが、そいつはやわらかくて美味いんだ。僕はたらふく食べた。毎日々々食べた。そして、たくさんの白い糞をおとした。二人のおじさんが、みつけるやいなや掃除してくれた。
 だけど勿論、食べきれるものじゃない。そのうち、赤トンボがいっぱい、建物の周りを飛び回るようになった。
 
 僕の天国は、突然終わった。最後の一匹の抜け殻が、今も窓のふちにのこって揺れている。そいつは、僕が気付かぬうちに、どこかへ飛んでいってしまったらしい。

 今の僕を見てくれ。ずいぶん太っただろう? byせきれい